「犯人は恋人の沙織、康之を利用して楽園を手に入れた話」
「楽園」の犯人は、康之の恋人である沙織でした。
康之を巻き込み、「楽園」を自分のものにするために、康之を利用するかたちで犯行が進められていた、というのが今作の核です。
しかもその標的となった人を選んだ理由は、沙織の身勝手な理由でした。
mochio自分がこれから住む楽園で犬飼いたいからとか、離れで過ごしたいから犯行に及ぶって、サイコパスそのものでサイコーです。
結末では、康之と沙織の二人がそのまま「楽園」で暮らしていくことになります。
恋人が犯人だというのは気づけるが、その理由が衝撃
やはり沙織が犯人だったけど、一番の衝撃その理由です。
康之の視点で物語を追っていたぶん、一番近くにいた恋人が全ての黒幕だったけど、その理由が自分の楽園を作るためと分かった瞬間、それまで読んできた場面が一気に違う意味を持って頭の中で繋がっていきました。
Xで「ぬ……?」と投稿してしていたのは、まさにこの瞬間です。
理解が追いつくまで数秒かかったのですが、追いついた瞬間の「あ、そういうことか」という感覚は、方舟を読んだときの衝撃に近いものがありました。
方舟を読んでいると気づける「麻衣=沙織」という仕掛け
作中では明言されていないのですが、「方舟」に登場した麻衣という人物が、実は沙織と同一人物ではないかと感じさせる描写があります。
「うれしいな。今回は、お別れを言わなくていいから」
方舟では別れを好きになった人に別れを告げなくてはいけなかったが、今回はその必要はないんですよね。
方舟を読んでいる人ほど、この繋がりに気づきやすい仕掛けになっている印象で、シリーズを追ってきたご褒美のような要素だと思いました。
逆に言えば、ここに気づかなくても物語として十分楽しめる作りになっていて、シリーズ未読でも置いていかれない理由の一つはこの塩梅にあると感じています。
康之を利用した犯行、その動機
沙織の目的は、「楽園」という場所そのものを自分のものにすることでした。
そのために康之を巻き込み、康之に「楽園」の存在を知らせ、探索させるところから、すべてが沙織の計画の中にあったことになります。
康之が自分の利用されていたことに気づくのは、すでに自分自身も犯行に加担してしまったあとです。
気づいたときにはもう引き返せない、というタイミングで真実に直面させられる康之を見ていると、それまで康之が信じて積み上げてきたものががたがたと崩れていく音が聞こえるようでした。
読んでいて正直嫌な場面でしたが、それだけに強く刺さる場面でもありました。
結末は「二人で楽園に残る」という選択
物語の最後、康之と沙織はそのまま「楽園」に残って暮らしていくことになります。
脱出という形ではなく、あえてその場所に留まることを選ぶという結末で、読み終えた瞬間は「これでいいのか…?」という戸惑いが強く残りました。
少し時間を置いて考えると、これは沙織にとっては計画通りのハッピーエンドだったのだと思います。
ただしそれは、康之を巻き込んだ末に成立したハッピーエンドという意味で。
読者が報われるミステリーは多いですが、犯人側が報われる読後感というのはなかなか珍しい気がしています。
感想まとめ
「楽園」の感想をまとめると以下の感じです。
- ラストの一言で伏線が一気に繋がる快感があり、方舟に迫るくらいの衝撃度だった
- 恋人が犯人だったという裏切りは、康之視点で読んできたぶんだけ効果的に刺さってくる
- 前作を読んでいるとより深く楽しめる仕掛けがありつつ、未読でも問題なく読み切れるバランスの良さ
- 康之が利用に気づく場面は、読んでいて嫌な気持ちになるくらい感情を揺さぶられた
- 結末は「これでいいのか」と考え込んでしまう、なんとも言えない嫌な読後感が残った
これらを踏まえて、おすすめ度は★3.7に設定しています。
どんでん返し系のミステリーが好きな人、方舟・十戒シリーズが好きだった人には間違いなく刺さる一冊です。
シリーズ未読だからと後回しにしている方がいたら、この「楽園」から読み始めてみるのもありだと思います。



「これでよかったのか」というより、今回も悪役の”あっぱれ大勝利”という読後感でした。
次回作もあるといいなー
以上!mochioでした!








